一発ネタ2(挨拶)
「何故だ?」
歩みを止めたギルガメッシュの問いかけ。揶揄する口調に、セイバーは首を振った。
「――貴方はただ間違っている。私はそう思う」
だから、
「そのように間違える者に、私は、負けを認めない」
何を言っているのだ、と、セイバーは思う。
もはや逃げ場はない。彼の一撃は、手加減しても自分を殺すのに何の不足もない。だが、
……断言できる。これは自棄ではない。
自分の言った事に、意味を感じている。
対するギルガメッシュが嘲笑する。そうか、と言いつつも
「間違えであればそれを正答とするまでのこと。聖杯の力ならそれも意のままだ」
空間から宝具が――乖離剣エアが姿を見せた。既に狙いは自分に付けられている。
ギルガメッシュが告げた。
「これが最後だ。5秒待つ、我の物になれ、騎士王」
言葉に偽りは無いことを察し、しかしセイバーはもう逃げない。足を肩幅に広げ、彼と向き合う。
思い出されるのは、かつての記憶。アーチャーが最後に見せた表情や、仲間たちの姿。
そして、一人の少年の事。
「私は……」
セイバーは呟いた。
「本当に間違っている人を知っている。他者を攻撃して生きていく人を」
セイバーは、自分に見せつけられた彼の背を思い出す。戦うための姿勢を、でも、
「その人は、貴方とは違う。その人は、……自分が間違っていると知っている、しかし、それだからこそ、そのことを恐れている。自分を潰してもいいぐらいに」
何故か、身体から余分な力が抜けていた。
「4」
言う、
「その人は間違いたいと思っている。貴方とは違う。正しくあれたらと思っていても、正しくありたいと思っていない。そして、彼は言うのです。自分自身と比較して、士郎のことを……」
一息。
「君は正しい、と」
それは記憶の底に根を張った言葉。
「3」
彼のことを、士郎のことを、そして自分のことをセイバーは思った。
「貴方は間違っている。間違って、そして間違っている。そこが彼と違う。正しく間違おうとしていない。だから私は、――貴方に負けを認めない!」
声が漏れていた。ああ、と。
「2」
選べ。剣を持つ手に力を込めることを。
「私は彼の間違いだけを認めよう。そして……」
戦おうと、セイバーは思った。彼が戦場を望んだように、自分もそれを望もう。
彼と、彼らと共にいるために。彼の背だけを見ずにすむように。
もはや選ぶのではなく、与えられるのでもなく、自ら望もう、ここにいることを、
理由は充分にある。正しい悪である彼と、正逆である歪な正義を持つ彼。彼らの間に立つために、今は正しくあろう。
「正しいままに、力を振るうために!!」
「1」
告げられた数字を合図に、剣を力任せに振り上げた。
「勝利せる――」
疲労は感じない。例え魔力は欠片も残っていなくとも、この一撃は撃てる。そう確信があった。
「黄金の剣!!」
こちらの剣が光を飛ばしたと同時。ギルガメッシュが叫ぶ。
「零! ――無駄なことを!」
乖離剣エアが光を放った。
無音と共に巨大な光が飛来する。それはエクスカリバーの光と一瞬拮抗し、それを飲み込んだ。
「……!」
セイバーは見る。ギルガメッシュの眼前、光が拡大し、そのままこちらに来るのを。
高質量の巨大な閃光がこちらに、わずかな弧を描いて走り出す。
力の打つ先にいるセイバーは、しかし、ひるまなかった。奥歯を噛み、真正面を見る。
自分を消そうとする光の塊。その向こうにいる英雄王の影を。
「――――!」
自らのマスターの名を叫んだ。
すると、目の前にその人が現れた。
セイバーの視界の中、自分と光の間に滑り込むように、その人の背が入っていた。
彼は懐からギルガメッシュの方へと何かを投じていた。それは四角いケースのようなもの。
次の瞬間、彼はゆっくりとこちらに振り向く。
肩に獏を乗せた、鋭い目の少年。ギルガメッシュの一撃が迫る中、彼の口がこう動いた。
「会いたかったよ、セイバー君」
Fate / Last Chronique
すんません。ネタがなくなると一発ネタに走ります__| ̄|○
今回のネタはFate+終わりのクロニクル。ただし、終わクロからは佐山の出張オンリー。
ちなみに、士郎→御言と、セイバーのマスター権が移ったと言う前提で。
佐山は士郎の天敵という事でひとつ(何)