一発ネタ(挨拶)
それが世界の選択である――。
「俺か? 俺は士郎だ。衛宮をやっている。
好きなように呼ぶがいい。緊張するな。ただの同級生だ。
お前が俺に敵意を持たぬ限り、我らと我は、お前に敵対はしない」
「俺の父――衛宮切嗣も、そなたのように星空を見ていた。
どこの場所でなにをしていても、絶対に似合わぬ男だった。
そこにあるのは、違和感。なにをしても場違いな、そんな男だった。
地上に落ちた、本来は星々を旅する男。そんな感じだった」
「苦手だったの?」
「少し……な。
指揮を執れば一流、あらゆる知識に秀で、数多の記憶と、過去を持つ。
未来を予測させれば、必ず当たった。この世界にないことすら、知る男。
忌々しいほどふてぶてしく、どんな状況にあっても、己の腕を信じて疑わぬ男。
衛宮という生き様は、結局奴がほんの20年ほどで作ったようなものだ。
魔術、戦闘術、魔術使いの心得……。
全て奴が持ち込んだものだ。
それだけのノウハウをどこからどう持ち込んだか、俺にも分からん。
奴は別世界から来たと言うが、子供でもそういうことは信じまい。
……父としては、最低の男だったがな。
すぐ姿を消して、不意に戻っては、また姿を消す。そんな男だった」
「我らを悪く言う「ただの人間」に、なにが出来る……。
我らもただの人間だが。
人は、ただの人間であることに異議を唱え、そこから抜けようとあがく瞬間からただの人間であることをやめるのだ。
俺は、随分前に「ただの人間」をやめたぞ。泣き言も、自分が小さい事を悲しむのもやめた。
それよりは隠れて努力することにした。努力は恥だが、悲しむよりはいい。
ただの人間である事を悲しむよりも、世界を敵に回して戦うための実力を磨くほうがいい。
どんな人間よりも、我らは恥をしのんでいる。
必要なら我らの信じる事を、万難を排して行うためだ。
そこで既存の勢力と戦いが起きるなら……、その結果、世界は、俺に征服されるだろう。
いずれ征服される我が国民を、なぜ将来の元首が傷つけなければならんのだ。逆だろう。
我らが我が国民を守るのだ。我ら(セイギノミカタ)は弱者と我が国民を守る義務がある。
それが我らの約束。
それが自分を信じることを他人に押し付ける代価として我らが払うものだ。
遠坂凛。
他人の言葉よりも己の心を信じて、善意で私と接した者、失敗を恐れぬ者よ。
それが、勇気と誇り。
そなたは勇気。
必要ならば人のために火に飛び込む決意。必要ならば世界を敵に回す善意。
魔術の優劣ではない。我らが我らたる理由。
胸を張れ。
我らは誇り。誇りこそ我ら。どの法を守るも我が決め、誰の許しも乞わぬ。
俺の主は俺のみ。文句があるなら、戦おう。
それが俺の生き方だ。そなたもそう生きよ。そなたには、俺の隣が似合うと思うぞ。
ただの人間より、衛宮の友として生きよ」
「強さと言う物は、なんなんでしょうね。
……サーヴァントでありながら、私は、分からなくなる時があります。
強さとは、特定の技が使えるからでも、能力が高いから得られるものでもない。
そう、私は知っています。
少なくとも、私が一番強いと思ったあの男は――あの死を告げる舞踏の勲章を持った者は
――衛宮切嗣は……」
セイバーは、なにか、ぶつぶつと独り言を言っている。
「別に特別な力なんて、ひとつだって持っていなかった。
すり足で一度も敵に攻撃させず、その拳で人間の限界を超えた存在である英霊を撃滅する。
……肉体を使いこなせば、そこまで人間は出来るのか。
本当に強ければ人間というものは魔術すら必要ないのか。
能力や性能を全部嘲笑いながら、目に見えて感じるものを突破したあの強さは。
人類でありながら、人類を突破したあれは、あの力で何と戦うと言うのだろう。
……聖杯を置いていくということは、もっと別のなにかがあるのか…奴は、何を考えている…」
「俺は、切嗣よりたくさんの話を聞かされてきた。真実のような話もあれば、嘘のような話もある。
――今は、思う。あの話は、みなが真実だったのだろうと」
「正義の味方って?」
「我らが、まだ幼かった時代。まだ幼くて、人々のために涙する以外に知らなかった時代。
まだ我らが世界の記憶でしかなかった頃。深紅の布を腕に巻いた、正義の味方がいた。
我らが、テンダーと呼ぶ男だ。それはただの男だったが、剣を取った。
恋人が殺されたとか、妻が死んだとか、理由は色々言われたが、真実は違う。
ただ、敵が気に入らなかっただけだ。別に正義感が強かったわけではない。
だが、どうにも我慢できなかった。ただ、弱者が死ぬのが我慢できなかった。
そして剣をとった。何度も負けたが、その度に立ち上がった。そして学んだ。
自分がなぜ、負けたかを。そして、負けない為にはどうするかを考えた。
人に教わるのではなく、自分で考えた。男には信念があった。自分が、最後だと。
自分の後ろには、他に民を守るは何もないと。実際そうだったかどうか分からぬ。
だが、男は信じた。血を流し、戦うその中で。叫びながら、剣を握ってそう信じた。
言った言葉はただ一つ、弱者のために。
我らの祖先は彼を見て、正義の味方がなんであるかを学んだ。
正義の味方は、血からも、魔法からも、科学からも生まれぬ。
正義の味方は、違う。
正義の味方は、ただの人間から生まれるのだ。
正義の味方は、ただの人間が、自分自身の力と意志で、血を吐きながら人を守る為に人でない何かに生まれ変わったものだ」
「…それでその人は、どうなったの?」
「…立派に戦って、そして死んだ。人類を守り、我ら人類はその結果、生きている。
皆は忘れたが、我らは知っている。
世界は、何人もの名のなき正義の味方達によって、いつも最後の一線を潜り抜けて来たと。
次は、我らの番だ。我らは、正義の味方ではないかも知れん。
その代役も果たせぬかもしれぬ。だが、最悪でも時間稼ぎにはなろう。
本物が現われるその時まで、人を守って戦おう。別に人々のためではない。
我らは、人に甘えるのは好かぬ。それだけだ。
誇りこそ我ら。我らこそ誇り。借りは必ず返す。我らは決めたのだ。
あの男の手を取ったその時に。泣くのはやめた。戦おうと」
「……良い話ね」
「そうだな。俺もそう思う。
切嗣より、まるで見て来たように何度も聞かされた、ありえない話。
今は、分かる。あれは、あったのだ」
士郎は、こちらを見て、笑った。
「俺は信じる。今は、それが信じられる。
そして思う。彼らのように、彼女たちのようになろうと」
「聖杯は、サーヴァントは人の心が生み出します。
この世全ての悪(アンリ・マユ)は願いをかなえる機械、半実体形成器が人の悪しき想念を受けて産んだもの。
あれを倒すには地下にある大聖杯そのものを破壊するか、さもなくば人々自身を変えるしかありません。
人の想念が変われば……人の想念が産んだものも変わります。
だが、人は本来、悪と善双方を備えるはず。希望と善意だけの人間など……。
人々自身が変わる、切嗣は、あの超人は、そのためにあなたをこの世界に残したのか……。
……分からない……分からない」
「お前も、そうなのか」
アーチャーは、青い光を出した。
自分の周りを浮遊させている。
「これは、かつて人や動物や、植物だった光だ。
かつて大切にされたものの光だ。……精霊という。
あまりにも強すぎるか、純過ぎる故に人の境界線を越えた者が、この光を武器にして、扱えるようになる。
全ての死者の代理人として、地上世界に……運命に介入するためだ。
人類決戦存在、正義の味方。最後の精霊手。
お前は強すぎたのだ。多くの死者の魂がお前を代理人として歴史を変えようとしている。
……もう、この戦いを終らせたいと。そう言っている。あの悪を、許せと。
教えよう。その光を、どうやって武器にするかを」
Fate/Stay Gunparade
ほとんど、台詞だけの一発ネタ。
本気にしちゃ駄目ですからー!!